せぴあ色したおもちゃ

Jack in the BOX

 

              かげぼうし 詩的・私的考察  そよ風の贈り物 
 くもの巣の虜  あかね色の郵便箱
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いらっしゃいませ!!どうぞ、ゆっくりご賞味いただけたら幸いです
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☆レィビー☆

*満腹なおおかみ*その2

さてさて、陽射しをたっぷりと浴びて

顎が外れちゃいそうな程の大あくびを一つして

やっと、あの満腹なオオカミ君が起き出してきました。

おや、萌え出ずる若葉の頃は灰色だった毛並みも

日光浴、はたまた、森林浴の成果か、こんがりと

チョコレート色になったようです。

緑濃い葉影から、お日様は白黒模様を創り、蝶ものんびり、

求愛のダンスを踊っています。

オオカミ君はほんのちょっぴり、おなかが空いたかもと

目の前で大きくマルを描いているアオスジアゲハを捕まえようと

その旋回を目で追って、おつむもグルグルになったので諦めた模様。

フン、どうせ、鱗粉で手がべとべとになるだけじゃないか
ちっとも、覚えの悪い大バカ野郎のとんとんちきだね、おいらも
花と一緒に綺麗だけど、ひらひらとちょこざいに蠢いている分
柑橘系の甘味としてはちょいと心もとないんだよ

と、嘯いて、クンクンと何処かからの

別の甘い薫りに誘われて、森の奥へと出かけます。

ありがたい事に実りの日々はまだまだ続いていました。

口のまわりを真っ赤に染めながら、サクランボ、枇杷、スイカ、

葡萄、梨とおいしい果物は盛りだくさん。

なんていう、幸福だろう、果報者だよ、おいらは

と 鼻の横を掻きながら、せせらぎのほとりで

身繕いをはじめます。

又、ふらふらとかぐわしい薫りに誘われて歩き始めました。

野バラ 蔓薔薇 赤い薔薇 ハラハラハラと花びら降らせちゃ
かわいそうです お兄様
刺が刺さった しっぽでそこら辺を薙ぎ払って歩いては
せっかくの秘密の花園が台無しです

とうになくした妹かと小さき声の先を見つめると

紅いマントの七星がオオカミ君の鼻の頭に留りました。

おや、お嬢さん、こんにちは

ごきげんよう 鳶色のお兄様
ねじばなというお花をご存知かしら
あたしのお城がある所なの
あたしはレィビー ねじばな王国の第一王女

これは失礼、お姫様
おいらはいつだって、ご機嫌さ。

ここはブナの森近く、野花溢れる原っぱからだと随分遠くまで

冒険をしたようだと、さては、この娘も迷子かなと考えていると

まぁ、御心配なく お兄様
あたしは 天の道しるべ
迷う事など ありはせぬ
ちょぃと疲れて 甘いおはなで休んでいるだけ

あぁ、いつの間にか、夕焼け雲から茜トンボが生まれ出る時刻

このお二人さんはどちらも暢気者のようで黄昏時を見誤っていたようです。

用心するに越した事なしだ〜ね。
こんな夏の午後は、境界線を司るクロノスだって、
居眠りをするときだってあるってことさ。
ほんの少し、夜の境界線の紐も緩んで、繋ぎ止めていた時間を
泡食って巻き取りに掛かろうとしてやがる。
ほら、ごらん。あっちの山から夜が忍び足で近づいてくる。
夜の女王のマントに絡めとられる前に、
いそいで、お城にお戻り、姫様

鳶色のお兄様、ご親切に。
お言葉に甘えて、お兄様のその長いおみ足を拝借してもよろしいかしら
蛍袋をカンテラにして、あちらの原っぱまではひとまたぎのご様子

あいよ、合点承知の助、お城までひとっ走り
お日さんには、ちょいと姫様を送り届けるまで、
西の空にしがみついていてもらいやしょうぜ

こうまで、持ち上げられて、乗らない朴念仁でもすっと児どっこいでもない、

至って、ダンディなオオカミ君、

暮れそうで、暮れない紅の夕日を浴びて

喜んでお城まで送ったそうです。

ほら、すぐそこに
淡い薄紅色の米粒ほどの花々がその名の通り
茎に根元から先端まで まるで朝顔の蔓のように
螺旋状に駆け上がっているでしょう
ここがあたしのお城
花はあたしと一緒に天に向かって伸びていって
きっといつかアルカディアにたどり着く
それなのに
ハッパはタンポポみたいに地べたにしがみ付いていて
これが現実と教え諭しているのかしら
花言葉は思慕 ねじりん棒の花束は誰の心をほどくのか
あたしは 知っているはず
ごきげんよう 鳶色のお兄様
素敵な夢を召し上がれ

と、お礼にと、とろけそうな大紅蟠桃 をいただきました。

見上げると、いつの間にか降るような星空、

蛍袋のカンテラはコーヒー色に溶け出して、

まんまるおつきさまが笑っておりました。

月の淡い光を浴びて

たくさんの命を糧にしているオオカミ君を

百獣の王にも似た黄金色に浮かび上がらせています。

そんなある夏の日の出来事でした。

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