せぴあ色したおもちゃ箱 |
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Jack in the BOX
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男女の蜜月は4年も続けば上出来で
後は想い出の時を刻んでいれば良い
社会的基盤がペアで行動する事を
定めてあるからか
結婚という契約は惰性というからくり
乗っかっていれば安心でらくちん
家庭は例えるなら針山みたいなもので
渾身の刺繍は見せびらかしたいけれど
お互い、針がどんな働きをしてきたか
詮索しないのが大人の礼儀とも言える
見せられた作品は褒めちぎりましょう
確かにあったはずの愛情は
もう胸の奥深く隠蔽され
イベントでさえおざなりになる
母という枠組みを消しゴムで
曖昧にぼやかしているあたしは
マイホームパパ、企業戦士、愛すべき夫という型紙を
きっちり着こなしているあなたに勝てっこない
貰ってきた花束でお茶を濁そうとした
父の日が地雷原だったとは
カサブランカの甘い薫りがきつい
思いやりを計算づくでこなしていくと
収支は負け越し始めて
挽回は高くつきそうである
どっぷりと幸せの寓話のぬるま湯に浸っていると
どんな抜け殻を愛でていたのか解らなくなる
*鳴く電灯*ちゃんと季節は夏至まで巡ってきたと言うのに |
なつは名のみのあめばかり
紫陽花は爛漫に咲きほこり
つゆの雫をぽとり、ぽとり
樹々の緑も色濃く、ゆるり
夏はまだだと雨降り積もり
バルカン州バーゲン群河馬市に禁止令が乱発され始めたのは第九代市長、スティーブ・マグワイヤーが就任して、やっと半年が過ぎてからである。挑発的なスローガンを愛している彼の就任演説では七五調の景気のいいリズムにのせ、韻を踏みまくってみせていた。先代市長、鼻芋与一の少年買春を47人の若手議員とともに現場に押し入って暴露し(神楽堂ホテル事件)、「河馬義士いろは48人衆」とまで呼ばれたマグワイヤー派が市議を牛耳ってから、種々の言論統制とも取れる条例が施行されだしたから堪らない。
まず五七調か七五調のリズムに乗らないとしゃべる事叶わず、文語調の詩歌の教則本がバカ売れしたまでは良かったのである。少子化対策として窓辺で愛のバラードを歌う事も義務づけられ、デートの誘いはまず恋文を投げ入れてからと言うご大層な事に相成った。こうなってくると特例措置や出来合いの詩が金よりも高い値で取引され、ブラックマーケットが出現し、まがい物を掴まされる素人が続出。
闇市場を暗躍する既存の詩人、ポエマーを捕まえるべく特攻警察も組織され、魔女狩りよろしくガリ版で客寄せの詩集を刷っていた吟遊詩人を血祭りに掲げた。しかし、吟遊詩人は旅芸人な訳であるから治外法権という保護下にあり、市中を引き回された後、過分の手当をもらいこっそり領地外に放たれていた。隠れポエマーを探す為の踏み絵を何にするべきか、まだ決まっていない。情報網がこれだけ完備された昨今、地球の片隅のゴルコンダ王国から罰則規制すれすれのものを配信するのは赤子の手を捻るようなものだという事に気がついていないのは騙される人の良い市民だけである。
あたしの心の奥底に
善と悪のふたごがちんまり住んでいる
哀しい事があるたびに
鏡の中の世界だと言い聞かせ
嬉しい事があると
これが当たり前だと言う現金な奴ら
言い訳上手なあたしと頑固者なあたし
嘘つきなあたしとバカ正直者のあたし
かわいげの衣を探しながら
メビウスの輪をぐるぐる回る
時と場合を使い分け
ふたごの片割れが顔を出す
そう、あたし達は世の習いという
パラドックスの住人ですもの
今の気分とあなた次第で
可愛い人にも悪女にもなってあ・げ・る
あたしは言葉遊びを愛している
創りものの仮面を鎧っていても
48の文字を舌の上で転がして
ギュッと絞ったあたしらしさを
指先から滴らせて紙面に散らす
オブラートにそっとくるんだり
奇妙奇天烈な単語に滲ませてく
ナルシストなのか歪なかけらも
鏡に映すようにさらしてみたい
草木も眠る 丑三つ時に
荒井さんの牛舎から
密やかな笑い声が三つ
漏れてまいりました
えっへっへ うっふっふ うっしっし
エッヘッへと笑った牛の坊やは
遠くまで走った冒険談のまっただ中で
ウッフッフと笑った牛さんは
お腹いっぱい食べたからヤッパリ笑みが零れだす
うっしっしと笑った牛君が
いったい何を夢見ていたやら
それはあなたのご想像のままに、ネ
頭の上からすっぽり
オブラードを冠ったような
曇りの日ばかりで
じっとりとした湿気に包まれていると
鬱屈ばかりが沈殿していく
そんな夜はお気に入りのマグカップに
とっておきのアッサムを入れる
ポットとあたしに銀のお匙2杯の茶葉
ケトルをピーピーやかましく湧かし
煮えたぎったお湯を入れる
ダンシング茶葉を見つめていると
空はとうとう泣き出して
銀色の針を蒔き散らしたよう
身じろぎもできぬ夜の底に
追いつめられたあたしは
たっぷりのミルクを入れ
琥珀色を鈍色にぼかすと
錆びた気持ちも緩んでいく
ほろ苦い渋みを舌で転がし
全てを飲み干してみせるの
わっしっし うっしっし
三拍子のリズム、灰色の空、優雅に
ワルツのステップ踏んで
雷様のお通りだい
のっしっし うっしっし
梅雨空を掻き回し
大地に吠えろ
ゴロゴロゴロガシャン
ドラムロールと供に
稲妻投げの記録更新中
いっしっし うっしっし
雲を挽き、千切って
投げつけたような大粒の雨
スクランブル交差点では
蜘蛛の子を散らしたよう
はっしっし うっしっし
夏空のフリンジ、入道雲を叩き起こせば
抜けるようなあお空
ギラギラの太陽と負けずに鳴き叫ぶ蝉の声
夏休みは直ぐそこさ
ようこそ いらっしゃいませ!!
こちらは管理及び著作権主張者である山南薫のかけらです
興味が湧いたら 是非 別の箱もご覧ください(Jack in the BOXに置いてあります)
幸せの四葉のクローバーをクリックするとそこへ