せぴあ色したおもちゃ箱 |
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Jack in the BOX
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夏から秋へと変容する季節の狭間は落とし物をしたようで
胸のパズルの欠片がひとつぽっかり
そんなアンニュイの気分は黄昏から夕闇に変わる
すみれ色の時間にピッタリです
夕立の後でやっと現れたお日様が
でこぼこの稜線のきわで立ち去り難く
早くおうちにかえらなくちゃ
暗闇が世界を飲み込む前に
いいえ、大丈夫と
夜の女王がマントを翻す
ゆっくりおうちにお帰り
秋の虫のオーケストラが哀愁のメロディをかなで
ほら、寂しくなんかないでしょう
リリリっ りりりっと共振する響きに背中を押され
喜びの詩にひっそり蒼い泪が
絶望の縁にちっちゃな花が一輪
想いのカプセルが靄のように
びっしりと空気中に漂っている
命の記憶で満々な雨上がりの夜道を行く
出涸らしのような夏が
のっぺりと緑に張り付いている
季節も針を進めるのを忘れたようで
時がとわに 流れていく
生まれ落ちた時代の旅人
その想いは 積っていく
しんしんと
真綿のように くるんとくるまれて
疲弊していく 日常にすり潰されて
渺々と吹き荒れる砂塵のような想い
時の波に攫われていく
秋にうまれた旅人も
冬にうまれた旅人も
春にうまれた旅人も
夏にうまれた旅人も
気がつけば夏だった
どの夏の記憶もよく似ているのです
幸せな夢を見続けて・・・
宵闇を切り裂き 弾け散る 花火のようで
夢から覚めるとジュワッと音をたてて消失するのでしょうか
花も散らねば たわわな実りもなく
サンサンとした夏色を消し去るように雨が降る
水の記憶が命の根幹を揺する
それでも夏は短い季節で
陽炎のような茫漠とした
欠けている消失感を
埋め戻したい一つの衝動で
夏の情景をこんなに切なく感じるのはなぜ
ヒグラシが盛りの終わりを告げているからでしょうか
まだ こんなに暑いのに まだ燃焼中だというのに
人の世に生きるには一人では寂しすぎるのでしょうか
この鮮烈な空や山や海も いつの間にか 艶やかさに染まりはじめ
血のような夕日の紅が静かに 静かに広がっていきました
夕闇へと向かう 全ての生き物が息を潜め
ゆるゆると夜への侵略を開始している瞬間
そのエアポケットのような ときのはざま
きっと羊水の記憶を刺激するのでしょうか
トクントクントクントクントクントクンと
あぁ どうしてヒグラシが鳴き始めたのか
今年最後の夏の後ろ姿はひときわ大きく
桃源郷へのきざはしを隠しているようで
あのひとからの招待状を受け取ったのは
だれ
桜貝
の
薄紅色
の
その夏
の
名残
の
斑紋が薄れていく前に
透き通る蒼に
吸い込まれてしまいたい
ガラスの靴を忘れていったはずなのに
二重写しの鼓動がひとりと半分
境界線を越えて
朧なまるみの輪郭を埋めていく
ビルディングに西日がきらきらと煌めき
赤煉瓦の陰影が深くなる
暮れなずむ交差点で
仕事帰りのあいつとばったり
よ、ひさしぶりと
何気ない調子で飲みにいく約束と
携帯の番号を 交換して分かれた
そして あたしは押し入れをごそごそ
ホームシックになると
封印したアルバムを引っぱり出す
教室の窓から校庭を見下ろして
馬鹿笑いしているあいつの輪郭をなぞる
凍結した想いが色あせた写真から 溢れ
あの頃の時間軸に ぴったりと重なった
お風呂で頭の中から足先まで
満杯のドキドキに溺れそう
はやく 電話鳴らないかな
ただいまというあの人の声で
セピア色の懐かしい風景の魔法が溶けたようで
ほろりと 蒼い泪 ひとつぶ
ぼんやりと座り込む影を置き去りにし
バタバタとした日常で飲み込んでいく
遥か昔の星空をかき消して
街の灯りがきらびやかに
車のヘッドライトで
ひき殺していくようで
全てが虫の息
夏色を消し去るように雨粒も騒いでいる
カプセルにくるんと包み込んで
猥雑な喧噪も生活の匂いも緑も想いも
漂流物のようにぷかぷかと流れていく
獣の皮を剥ぎ取られた人が
常識をたてに完全武装した言葉を吐き出す
怒濤のような社会の渦巻きに絡めとられていく月曜日
真夏の夢から覚めた怠惰は
ジュワッと音を立てて消失した模様
お布団の蛹に戻れたらな
あぁ、いきたくない
憂鬱にシュガーコーティングされた体は
湿気でずくずくに溶けてしまいそうで
モビルスーツでビシっと決めて水鉄砲片手に
飛び出していったとして一体何と戦えと言うのか
寄せる波のような脳内ぼやきを繰り返す
やれやれ、本日も日常というベルトコンベヤーに間に合ったようだ
琥珀色の9月を覚えている
怪しい季節だった
夜空とダンス
雨降りのタンゴ
憂鬱虫を飼いならしたタンス
そう、ぼくらは裏街道を突っ走るギャング
すみれ色の夕暮れ 茜雲でコーティング
爪痕のような三日月 一粒の泪☆
星屑のバラード
金粉の大盤振る舞い
脳内大爆発してセレナーデ
夜の帳 ふかい ふかい 夕闇のドレス
夢と幻が交差する舞踏会
日常も舞い踊る
秋が来たかと眺めてみたら
ギンナンは忍法葉隠れの術発動中
残暑ざんしょ
暑いザンショと怒ってみても
たそがれはつるべ落としのすみれ色
残暑ざんしょ
☆が出たかと見上げてみれば
鰯の大群の下おぼろ月夜のかくれんぼ
残暑ざんしょ
鈴虫が苦虫をつぶしたような
カンカン日照りの昼下がり
スーパーではサンマが大漁で
大根おろしもスダチも準備万端
秋を味わう食卓に登るのを
今や遅し と待ちかねている
鰯は豊漁旗の漁師さんと追いかけっこ
遥か彼方から見下ろしてひっそりと
蒼いお空で悠々とたゆたい三勝二敗一引き分けの模様
気の早い暦ばかりが秋だと騒いでる訳ではなく
夜と昼との境界線の綱引きも今がたけなわなようで
ウサギの応援団長は弓張月の船の上
大きく団扇を振り上げてまんまるになぁれと企んでいる
夏、真っ盛りの宵闇を切り裂いて
とりどりの色と散っていった夜空
が
赤ん坊
を
落としていきました
ぽ〜ん
ぽーーーん
ぽ〜〜〜――〜〜ん
ぽ
ぽ
ぽ
ぽ
ん
風になぶられ ゆらゆら揺れている
曼珠沙華
紅の結実
は
一体何の因果だったのだろうか
煩悩の響き
が
暮れていく空に吸い込まれていった
曼珠沙華夏の夜空の落とし物
曖昧模糊のもこちゃんは啓蟄の頃のヘッジホッグの同類である
もこちゃんは悪夢をムシャムシャ食する貘の遠い親戚で
ペガサスやユニコーンとも従姉妹筋かなんかじゃなかっただろうか
もこちゃんをツチノコのように実際に捉えた人はまだいない
もこちゃんはこの頃、魔法をかけられたようで
蕾のまま どちらにも行きようがなく戸惑っている
降ってくるスイッチオン
スイッチオンという怨嗟の鳴き声で
慌ててそちらに向かおうとすると
ジジジジとかき鳴らすサイレンで嫌々まだまだと
夢から覚めたように夏を引きずっている
すると緑も澱んで発酵を始め グズグズと燻るようにくすんでいく
もこちゃんに加勢するように風が
北から爽やかと言う垂れ幕を引っ張ってきても
寄せては返す季節の狭間は台風の目のようで
グルグルと
指針も決めかねて 目を回して伸びている始末である
オ〜イ、もこちゃん
風見鶏はどこを目指しているの
もこちゃんも もういい加減
はっきりしなくてはいけないなとは思っている
夜は秋のオーケストラのコンダクターとして
立派に職務を全うしているのに
昼間はお日様の圧力にどうも負け気味です
先日の満月の日はウサギさんの
餅つきに会わせて秋のリズムに全世界を染め上げ
時々雲のヴェールをドライアイスのような舞台効果として
ふっと
登場させる憎い演出までする苦労人でもある
ぼやけていく季節の不透明な空気は
闇に溶け込んで
怠惰から色づく感情へと重心を移動していく
もこちゃんはどうも未だに怠惰が好きなのかな
(忘れ物はありませんか)
もこちゃんはハトバスのコンダクターのまねがお気に入り
もこちゃんは冬将軍に実はプロンプターを持たせていて
ファザコンの北風小僧の寒太郎に
意地悪をされているのに気づいていない
発光の時は きの趣くままのようで
(体感7度までしばらくお待ちください)
もこちゃんは深々とお辞儀をしております
掌からうたが溢れ
あおいそらに吸い込まれていく
天上人の哀しみの衣を揺すり
流れ星がひとつ零れて散った
足下からうたが生まれ
あおい海原に 滲んで消えた
深海魚の喜びのざわめきに
哀しみ色がふたつ混ざったとして
気づく人がいるのだろうか
唇からうたが紡がれ
緑の大地にひっそりと畳まれる
透過していく躰
雨の花を宿し潜む感情
水の記憶に肩を抱かれ
遥か遠くを憶う
蒼い夏の追憶が風を渡り
満ちていく潮が頭上を翳め
夜の眠りの裾をくすぐる
ほら 紅の色がほころび始めた
シロナガスクジラの一家が
泳ぎ回れる程
頭の中は巨大だった
目の前は
人いきれで
ぎゅうぎゅうの
すし詰め状態
心が
あっぷあっぷで
溺れる前に
お風呂を
すみれ色で
満たしていく
ナデシコ 桔梗 コスモス 萩 葛 藤袴
とりどりの秋を溶かし込み
強張った躰をほどいていく
入浴時間
ニューヨーク
は
今、朝8時
ようこそ いらっしゃいませ!!
こちらは管理及び著作権主張者である山南薫のかけらです
興味が湧いたら 是非 別の箱もご覧ください
(Jack in the BOXに各種?取り揃えてあります)
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